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皮膚の基礎知識

皮膚の構造

昔から「皮膚は一畳、一貫目」といわれるように、わたしたちの体を覆っている皮膚は広げると約1.6メートル、重さは3~5キログラムあります。厚さは平均1.4ミリですが、体の部位によってまちまちで、最も厚いのが足の裏。まぶたの皮膚は最もうすい箇所です。
内臓器とちがい、つねに目に触れている器官ですが、正しく理解しているとは言えません。
一枚の衣服のように見える皮膚も、縦割りにしてみるとなかなか複雑です。
肌の構造は上から、表皮、真皮、皮下組織(脂肪)の三層からなっています。ちなみに毛髪、爪、脂腺、汗腺、なども皮膚の一部で、これらは皮膚付属器とよばれます。
指で軽くつまむと、表皮、真皮、皮下組織の一部が持ち上がるというわけですが、それぞれについて、簡単に説明しておきましょう。

【表皮】

小さなけがをすると血は出ないで、皮だけが剥けることがありますが、これは皮膚の最も外側の表皮がはがれた状態です。
皮膚をよく観察すると、細かい網目状に溝が走り、四角、あるいは菱形の丘を作っています。それぞれを皮溝、皮丘と呼び、皮溝が広く深いと、皮丘の高さが目立ってしかも不揃いになる。表面もざらざらとして、いわゆるきめの荒い肌になるわけです。
こうした表皮はさらに四層に分かれています。上から、角質層、か粒層、有きょく層(きょく状層)、基底層となっており、この四層のなかで絶えず細胞の生死が繰りかえされているのです。
次々と新しい細胞を生み出している所は主に基底層で、生まれた細胞は、次に生まれた新しい細胞に押し出されるようなかっこうで、皮膚の表面に向かって移動していきます。
角質層にたどり着いた細胞はやがて死んで皮膚からはがれ落ちていくのです。その細胞の死骸がアカなのです。
皮膚の細胞が基底層で生まれて、角質片(アカ)となって死んでいくまで約28日とされています。次々と生まれる細胞がそれぞれ28日のサイクルで皮膚を形成していくのです。
少々のけがをしても、すぐに元通りになるのも、この絶え間ない細胞の再生力のおかげというわけです。

真皮

表皮のすぐ下にある層で、表皮の数倍の厚さを持っています。皮膚の本体ということから真皮と呼ばれるように、皮膚の大部分を形成するものです。
真皮は線維状の結合組織からできており、タンパク質や糖質、ミネラル、水分を含む線維物質です。
この結合組織とコラーゲンとは深く関係がありますが、これについては後の章で詳しく述べます。
また真皮のなかには、毛根、汗腺、皮脂腺神経、リンパ管、毛細血管などがあり、皮膚に酸素や栄養を送ったり、分泌作用をするなど大切な働きをするほか、肌に弾力を与えているのもこの真皮の役割なのです。
皆さんがけがをしたとき、血がにじむのは、この真皮を傷つけたためです。

皮膚の役割

三段構えになった皮膚は、体温を調節したり、栄養を吸収するなど内部とのパイプ役をするいっぽう、痛みや温度などをまっさきに感じたり、冷気や紫外線から保護するなど、外に対して前線部隊として活躍しているのです。

1.防御、保護作用
これは皮膚の最大の使命といえるものです。私たちの皮膚は、外部からのいろんな物質との接触、刺激が絶えません。たとえば、紫外線の過剰侵入に対しては、体内に取りこむまいとしてメラニン色素を増やします。あるいは、洗剤などを使うと、表皮に分泌された皮脂と水分との乳化作用でまとまった酸外套で中和します。洗剤を使い過ぎると、手荒れを起こしたりするのは、この酸外套が破壊されるからです。
また、炎症や細菌が侵入すると、表皮、真皮にいる細胞成分が食べてしまい、体内への侵入を防ぐのです。
2.体温調節用
体温が逃げないようにすると同時に、周囲の温度からも保護してくれています。体温の調節は汗腺と血管をコントロールすることによって、一定に保つのです。激しい運動などによって体温が高くなったり、外気の温度が高くなると、汗をかき血管を拡張して熱を放散して体温を下げます。寒いときには、逆に血管を縮小して外部に熱が逃げないようにするとともに、皮脂腺から脂肪を分泌させてコートの役目も果たします。
3.分泌作用
真皮にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺、皮脂腺などの分泌腺が存在しています。エクリン腺から出る汗は99%が水分で、残りの1%は有機塩類と脂肪酸で、透明な液です。手のひら、足の裏、うなじ、前頭部、わきの下からたくさん出されるものです。
汗臭いにおいのもとではありますが、そもそも無臭。空気に触れて、あの独特のにおいを発散するのです。
アポクリン汗腺は体臭となるもので、これはエクリン汗腺から出る汗とちがって、粘着質です。わきの下、陰部、肛門の周囲などで分泌され、こちらも無臭ですが、細菌の作用で特異なにおいを発します。
皮脂の分泌は気温に反応し、温度が上がるにつれて活発になりますが、1日にごくわずかといわれています。
秋から冬にかけて気温が下がる時期は、皮脂の分泌が減り、肌がかさかさになりがち。ですから油分を補ったりマッサージをするなどの手入れが必要なのです。
こうした皮脂腺と汗腺が皮膚の表面に分泌することによって、肌に潤いがもたらされてもいるのです。
4知覚作用
2.5センチ角の皮膚にある神経を数えあげてみましょう。78の温覚の神経終末、12の冷覚の神経終末、19500の神経終末の神経細胞、160~165の触覚・・・。
つまり、皮膚は、熱い、冷たい、何かに触れたということに敏感なのです。なんらかの感覚をキャッチするとこれを大脳に伝えます。また、汗をかいたり鳥肌がたったりするのは、大脳からの命令ではなく、自律神経で行われるのですが、皮膚はこのように刺激反応する作用があります。

老化の要因

(1)コラーゲンやエラスチンの変化
皮膚の真皮を構成しているのは、結合線維(コラーゲン)や弾力線維(エラスチン)です。
コラーゲンは牽引力の強い線維で、体を支えたり保護、強化の役目を果たしています。
エラスチンはゴムのように弾力のある蛋白質線維で、こうした線維が網の目のようにからみあって、はりのある皮膚を形成しているのです。
しかし、加齢とともにこのコラーゲンやエラスチンにも機能の衰えが始ります。
結合組織は赤ちゃんのときにはみずみずしいのですが、その代わりに弱い。しかし、大人になるにつれて丈夫になり、老齢になるにつれて柔軟性や弾力性を失っていくのです。
老化の原因はいろいろあり、解明されていないことが多いのですが、老化の大きな原因の一つに結合組織の変化があるということが分かっています。
(2)細胞の分裂、再生能力の低下
基底層から角質にかけて行われている細胞の世代交代も減少していきます。いったん疲労した肌が蘇るのに、時間がかかるようになるわけです。
(3)内分泌機能の低下
さらに、皮脂腺機能も低下して、皮脂の分泌もすくなくなり、皮膚は乾燥して真皮の容積も減り、皮膚本来の水分保持能力も衰えるのです。その結果、肌の張りはなくなり、一度できたたるみはもとにもどることがなく、シワとなり、かさかさとした肌になるというわけです。
(4)日焼け
太陽の光はなくてはならないものですが、太陽との『危険な関係』は避けましょう。
というのも、日焼けはいまや皮膚の老化の外因性要素と目されているからです。
日光光線には、紫外線から赤外線までいろいろありますが、中でも中波紫外線が最も皮膚に入り込みやすく、悪い影響を与えます。
紫外線で破壊された細胞が、まだ修復する力がある20代前半にとどめておきましょう。日焼けは、皮膚の老化だけでなく、細胞の遺伝子を変化させて癌化させるという観点からも、十分注意したいもの。
環境因子としては紫外線だけでなく、赤外線や温度も老化と関係があるのですが、日焼けの与える影響はより明らかです。
(5)精神的要因(ストレス)
老化の進みぐあいには、ご承知のように随分と個人差があります。同年齢でも驚くほどに老けこんでいる人もいるし、まだまだ異性の関心を引く若さを保っている人もいます。
これは、その人の経てきた肉体的、精神的なストレスに深く関係しているでしょう。

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